健康管理システムHM-neo導入事例

株式会社MOANA土肥産業医事務所

産業保健専門家 土肥誠太郎氏 インタビュー

健康管理システムを産業保健の基幹システムへ
従業員の健康を戦略的に改善するために必要なこと

株式会社MOANA土肥産業医事務所

産業保健における健康管理システムの必要性

 NTTテクノクロスと健康管理システムHM-neo(エイチエムネオ)のアドバイザー契約を締結した産業保健専門家で医師の土肥誠太郎氏。これまで30 年以上にわたり企業の統括産業医を務め、現在は自身が設立した株式会社MOANA土肥産業医事務所で産業保健全般から労働安全衛生に関するサービスを提供している。今後、産業保健において健康管理システムはどうあるべきか。土肥氏へお話を伺った。


 産業保健における現状と課題については、厚生労働省の検討会や日本産業衛生学会で議論が進んでいる。雇用形態の多様化やIT技術の進歩により、産業保健が対応する範囲が拡大している状況である。本来は、すべての労働者に産業保健サービスが届くようにすべきであるが、小規模事業場や個人事業主には、法令の限界から産業保健サービスがあまり届いていない。企業や事業所の規模によらず全事業場に対し、実態に合わせて産業保健サービスを提供する体制を整備することが重要だ。こうした現状に対し、土肥氏は「中規模以上の事業場においても、事業者がどこまで従業員の健康を重視しているかによって、健康管理のレベルも変わってしまう実態がある」と話す。

 前段で産業保健が対応する範囲の拡大について触れたが、具体的には労働安全衛生法等に係る健康診断の実施や結果保管・報告といった義務範囲に加えて、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する動きが定着し始めたことが関連している。各企業では産業医や保健師の適正配置に加えて、健康管理システムの導入が進み、これまで手作業で行っていたデータ処理や事務作業の効率化を図っている。土肥氏も日々の業務において、NTTテクノクロスの健康管理システムを利用している。

健康管理システムHM-neoができること

 HM-neoの印象については「産業保健の業務の流れやデータ処理のやり方を熟知した人たちが作ったシステムだと思いました」と話す。特に注目したのが、有害な物質を扱う業務に従事する人を対象とした特殊健康診断の管理方法だ。「HM-neoは、有害物質の作業履歴から特殊健診項目を個人ごとに設定し、その結果を記録して、個人に結果を返し、監督署へ報告するデータを抽出するというステップが一連の流れとしてできあがっています。さらに、誰がどんな有害物質を扱う業務に従事していたのか履歴として一目瞭然で残っているところが非常に重要なポイントです」と土肥氏は話す。

 産業保健における従業員の健康管理は、健診データを記録するだけでは不十分だ。過去の所属歴や病歴、検査歴など、健診データ以外の健康情報も含めて時系列で整理されていることが、適切な検査の実施や生活指導において重要な意味を持つ。「HM-neoは産業保健の観点で必要な情報が補強されていて、過去からのデータが一目で把握できるようになっています。従業員の健康度を上げる取り組みをする上では、なくてはならないシステムです」と土肥氏は語る。

 また、土肥氏はストレスチェックのデータを一緒に管理できることも重要だと見ている。「健康管理は従業員のためのものですが、ストレスチェックは組織のためでもあります。集団分析結果を基にして、長時間労働の是正や職場の環境改善を行うことは、健康経営®にも直接的に関連します」と企業にとってのメリットを挙げる。ポイントはデータを集約して解析することにより、職場風土の醸成や働きやすさの向上につなげることが可能になる点だ。

「HM-neo」を産業保健の基幹システムへ

 土肥氏は健康管理システムアドバイザーとしての目標の一つに、健康に関わる情報をすべて集約することを挙げる。これからの健康管理システムには、産業保健の業務がすべてできるデジタル化が必要だと考えており「産業保健だったら何でもできる、産業保健の基幹システムを作りたいです」と意欲を語る。

 産業保健の基幹システムに必要なデータや機能は多い。HM-neoは健診データ、ストレスチェックや病歴、有害業務の履歴、残業時間といった個人の健康に関するデータはもとより、病院への紹介状を簡単に作成できる機能や面接記録といった産業医、保健師の業務を支援する仕組みを持っている。

 これらの基本機能に加え、健康にまつわるデータを加工して自分たちの戦略を練ることができるシステムであることも必要だという。「経営者と対話するためにデータ作成を容易にしてくれたり、健康管理に携わる人たちが、自分たちの5年後、10年後の姿を描いて目標を考えることを支援したりする仕組みが必要だと考えます」。これらは、産業保健の基幹システムとして重要な要素だと土肥氏はいう。

 もう一つ、従業員の健康リテラシーを高める仕組みも必要だ。信頼できる健康情報を選別して個人に通知し、従業員の行動を促すきっかけづくりに役立てる。土肥氏は「従業員が情報を見て自分で判断し、自ら健康行動ができるようになっていくツールにも発展させていきたいです」と思いを膨らませる。

経営の中核になる健康管理を担う、システムの役割

 組織の健康問題を改善する方法としては、健康リスクの高い層に対象を絞って集中的に対策していくハイリスクアプローチが採られることが多い。しかし、土肥氏はそれだけでは集団としての健康レベルの底上げは不十分だと考える。ハイリスクアプローチに加え、正常数値に収まる人たちのレベルアップを図るポピュレーションアプローチと両輪で進める必要があるという。「大きな集団に向けたポピュレーションアプローチでは、放置すればハイリスクに移行しそうな中リスク者へ向けた施策の効果を測れるかどうかも重要です」(土肥氏)。そのためには、組織のデータを事前に集め、整理して常に見えるようにしておく必要がある。組織の健康レベルを様々な観点で可視化できることも重要なポイントだ。

 「専門家が常にいなければならないシステムではなく、究極的には産業医がいなくても健康維持できるくらい従業員一人ひとりの健康リテラシーを向上させ、退職後も本人が過去のデータを引き継ぐことができるシステムにまで進化させたいと考えています。AIの利用も当然視野に入ります」と土肥氏は今後の展望を明かす。 ※2025年度より順次サービス提供予定

今一度、産業保健の原点に立ち返る

 今後、企業における産業医、保健師の役割はどのように変わっていくのか。システムの利便性が高まっても、産業保健の本質は変わらないと土肥氏は考えている。「本当に必要なのは、人と人とのコミュニケーションです。システムは、産業医や保健師が従業員と直接コミュニケーションをとる時間を増やしていくためのツールであってほしい」。従業員とのコミュニケーションが増えることによって、信頼関係が醸成され、産業保健の質をより高めることができるからだ。

 人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営においても、健康指標は重要な指標とされている。目的や手法などの表面的な取り組みを追い求めるのではなく、手助けが必要な時を見つけ出すことも産業医の仕事だ。従業員一人ひとりに健康でいてもらうために何が必要か、常に考えることが求められる。

 従業員の健康管理においては、もう一度原点に立ち返って一歩ずつ前に進むことが重要だ。HM-neoは土肥氏のような有識者の観点を活かし、今後もさらに進化を続ける。また、2025年度より順次サービス提供するという新機能にも期待したい。


※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

企業情報

社名
株式会社MOANA土肥産業医事務所
設立
2022年5月
社員数
-
事業内容
産業医サービス,社員と企業を元気にサービス,労働衛生システムチェック(監査)サービス,健康管理(組織)構築支援サービス,健康経営支援サービス,最高健康責任者(CHO:Chief Health Officer)関連サービス・産業医業務
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